日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
呼吸循環器系疾患を有する高齢者の全身持久力と行動体力構成要素との関係
有薗 信一内山 靖
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2009 年 46 巻 4 号 p. 341-347

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抄録

目的:本研究では健常高齢者と慢性呼吸器疾患,慢性心疾患を有する高齢者の全身持久力と他の行動体力の構成要素との関係を明らかにし,全身持久力の程度や疾患の有無によって違いがあるかを検討することである.方法:対象は,健常高齢者群15例,慢性心疾患群15例,慢性呼吸器疾患群17例の合計47例であった.対象に漸増シャトルウォーキングテスト(Incremental shuttle walking test:ISWT),Timed up and go test(TUG),Functional reach test,片足立ちテスト,握力,膝伸展筋力,Half-squat test,Step test,長坐位体前屈の測定を行った.各測定値やISWTの歩行距離と他の測定項目の相関関係を検討し,疾患別ならびに全身持久力が心移植の体力指標であるISWTの歩行距離450 mを基準に,群間の比較を行った.結果:全身持久力が低いISWTの歩行距離450 m未満群は,450 m以上群と比べて,TUG,Half-squat test,Step testの成績が有意に低く,450 m未満群のみでISWTの歩行距離とTUG(r=-0.819),膝伸展筋力(r=0.659),Step test(r=0.632)の間に相関を認めた(p<0.001).また,慢性呼吸器疾患群,慢性心疾患群,健常高齢者の順にISWTの歩行距離は有意に低値であり,ISWTの歩行距離と相関を認める体力構成要素の項目が多かった.結論:全身持久力が低い対象者ほど,全身持久力に様々な体力構成要素が影響していた.ISWTの歩行距離が450 m未満の場合は,理学療法を行う際に全身持久力だけでなく,バランスや敏捷性の改善を期待できる項目も実施する必要性が示された.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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