ワルファリン(WF)の抗凝固効果には大きな個人差が存在するため,至適投与量の設定がしばしば困難となる.WF投与量の個人差に関する多くの臨床試験により,WFの血中濃度はCYP2C9 遺伝子変異により上昇し,一方WFの感受性はVKORC1 遺伝子変異により高くなることが判明している.アジア人や白人においては年齢や体重などの患者背景因子とCYP2C9 とVKORC1 両遺伝子型によりWF維持量の個人差の60%程度まで説明可能となってきた.そのため米国FDAでは2007年にWF添付文書にCYP2C9 とVKORC1 遺伝子情報をWF投与量の影響因子として追加した.しかし,INRに加えて両遺伝子検査を全てのWF導入患者に実施することの臨床的有用性は現在のところ確立していない.本稿ではWFの投与量に関与する両遺伝子変異の臨床的意義について,白人とアジア人を対象としたRetrospective試験,並びにProspective試験結果を基に紹介したい.