日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
シクロスポリン単独療法で寛解したネフローゼ症候群の1例
長門谷 克之
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2010 年 47 巻 5 号 p. 468-473

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抄録

症例は80歳台前半女性.腹部膨満,下肢浮腫のため近医受診しネフローゼ症候群と診断され当科へ紹介された.初診時TP 4.1 g/dl ,Alb 1.7 g/dl ,UN 73 mg/dl ,Cr 1.43 mg/dl であり胸部レントゲンにて胸水を認めた.同意が得られず腎生検は行わなかった.利尿薬やアルブミン製剤の使用で浮腫の管理を行うも,徐々に腎機能低下と水分貯留状態の悪化を認めた.従来より腰痛や消化器症状があり,副腎皮質ステロイド薬(以下ステロイドと略す)による骨粗鬆症,消化性潰瘍などの副作用を懸念しシクロスポリン単独療法を開始した.その後,一時的に血液透析を必要としたが,徐々に尿蛋白減少,腎機能の改善を認め,最終的に完全寛解した.膜性腎症などの自然寛解の可能性も考えられたが,シクロスポリン減量中に再燃し,再増量で完全寛解したことからシクロスポリンの治療効果が確認された.ネフローゼ症候群の治療においてはステロイド療法がよく行われ,シクロスポリンはステロイド抵抗例,依存例に限られるのが一般的であるが,高齢者などでステロイドを使用しにくい症例においては単独療法も選択肢のひとつとして挙げられると考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本老年医学会
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