2011 年 48 巻 1 号 p. 47-50
高齢者の転倒は骨折を介して生命予後に重大な影響を与える.また高齢者における筋萎縮/低下(sarcopenia)は,転倒を含め将来の身体的な機能障害のリスクとなることが報告されている.さらに現在ではsarcopeniaとともに内臓脂肪の増加(obesity)が併存する「sarcopenic obesity」という新たな病態が提唱されている.本研究ではsarcopeniaの評価を大腿中部の大腿筋四頭筋断面で,obesityの評価を臍部の内臓脂肪面積でおこなった.両指標と立位動揺性の指標である重心動揺の増加(姿勢不安定)との相関を検討した結果,高齢者においては大腿四頭筋面積の低下と内臓脂肪面積の増加は,年齢・性別と独立して,姿勢不安定性と関連がみられた.さらにsarcopeniaあるいはobesityのみではなく,体重に対する相対的な筋力の低下であるsarcopenic obesityが姿勢不安定を介した転倒リスクとして重要であると考えられた.