2011 年 48 巻 5 号 p. 509-515
目的:特別養護老人ホーム内で死亡した入居者の特徴と終末期についての意思確認の現状を明らかにすることを目的とした.方法:横浜市内のS特別養護老人ホームを1998年4月から2008年6月までに退所した利用者168名のうち,自宅へ退所した1名とグループホームへ入所した2名を除く165名を対象とした.基本属性および終末期に関する情報を,診療録,死亡診断書,看護記録,介護記録,相談員記録より後方視的に調査した.結果:調査総数165名のうち,施設内で死亡した者(施設内死亡群)が30名(18%),病院で死亡した者(病院死亡群)が101名(61%),長期入院により退所となった者(長期入院群)が34名(21%)であった.性別は男性38名(23%),女性127名(77%)であった.施設内死亡に至った要因を明らかにするために,施設内死亡群とその他の2群に分けて退所時年齢,性別,在所期間,入院回数,入院日数,実子人数,終末期に関するカンファレンス実施回数を説明変数として判別分析を行った結果,施設内死亡群では,カンファレンスの実施回数が多く,年齢がより高く,入院回数が少ないことが明らかとなった.終末期をどこで迎えたいかという本人の意思確認ができていたものは12名(7%)のみで,家族の意思確認ができたものは61名(37%),どちらの意思も確認できていなかったものが100名(61%)であった.結論:特別養護老人ホーム内で看取られた者は,年齢がより高く,入院回数が少なく,終末期に関するカンファレンスの実施回数が多かった.一方,終末期に関する本人の意思を確認することはきわめて困難であった.今後,特別養護老人ホームにおいて,本人や家族の意思の確認が困難な場合の終末期ケアの在り方について十分検討する必要がある.