日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢者終末期での入院治療選択に関する署名による意思確認の試み
佐藤 武佐藤 和典佐藤 暁
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2011 年 48 巻 5 号 p. 524-529

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抄録

目的:終末期においては,治療選択が患者・家族の要望に沿えるよう,患者の意思を基本として,家族の推定意思や医療・ケアチームによる繰り返しの話し合いでの治療方針の決定が勧められている.特に高齢者の終末期医療においては,高齢者が終末期であることを判定するのが難しいなか,われわれは心肺蘇生術やその他必要な治療の施行について,署名による治療選択の意思確認を行ってきた.この署名による意思確認の受け入れ状況がどうであったか,当院の終末期対応と共に調査検討した.方法:対象は2009年4月から2010年3月までの入院患者で,治療希望を申請書への署名により確認した患者98名(実患者数88名)(署名群)と同時期に治療希望の署名をしないで死亡退院した患者165名(署名なし群)である.両群のカルテ調査による比較検討と両群への郵送によるアンケート調査を行った.結果:終末期と判断され申請書を提出した98名中32名(32.7%)が生存退院していた.署名群は署名なし群に比べ,高齢で脳血管疾患や認知症を有し日常生活動作も低下し,呼吸器疾患により入院する患者が多く,またインフォームドコンセントやチームカンファ回数も多かった.アンケートは署名群31名(35.2%),署名なし群58名(35.2%)から返答があり,署名群の27名(90%)が申請書の受け入れは良好と答えた.両群とも9割以上が医師の説明は理解でき,医師への要望も伝えられたと答えた.結論:高齢者終末期での入院治療選択の意思確認を署名により行ったが受け入れは良好で,高齢者終末期医療における治療選択の確認の方法の一つとして有用と思われた.

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© 2011 一般社団法人 日本老年医学会
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