日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
劇症1型糖尿病の2例
松田 浩史古賀 直子福島 英生
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 48 巻 5 号 p. 565-569

詳細
抄録

症例1.61歳,男性,口渇,倦怠感あり随時血糖値1,071 mg/dl ,HbA1c 5.8%(以下JDS値),尿中ケトン(3+),ABG:pH 7.113と糖尿病性ケトアシドーシスを疑われた.
入院時検査所見:尿検査にてケトン体(3+),動脈血ガス分析においてもpH 7.113,BE -19.9と著明な代謝性アシドーシスを認めた.HbA1cは5.8%と正常上限であったが,アミラーゼ,リパーゼ,エラスターゼ1等の血中膵外分泌酵素も上昇していた.一方膵島関連自己抗体は陰性であり腹部CTにおいても膵臓等に特記すべき異常は認めなかったが,尿中C-ペプチドは著明に低下していた.ケトアシドーシスを伴って急激に発症したこと,発症時に著明な高血糖にもかかわらずHbA1cは正常であったこと,尿中C-ペプチドが低値で既に内因性インスリン分泌が枯渇していたことより劇症1型糖尿病と診断した.
症例2.77歳,男性,突然,口渇・多尿・頻尿の自覚症状が出現したため翌日当院受診したところ,血液検査にて血糖値925 mg/dl と著明な高血糖を認めた.尿検査にてケトン体は認めず,動脈血ガス分析においても代謝性アシドーシスは認めなかった.しかし血中ケトンは上昇し,尿中C-ペプチドは著明に減少,にもかかわらずHbA1cは5.9%とごく軽度の上昇であり,リパーゼ,エラスターゼ1の上昇等からも劇症1型糖尿病と診断した.膵島関連自己抗体は陰性であり腹部CTにおいても特記すべき異常は認めなかった.
劇症1型糖尿病の2例について報告するがうち1例については後期高齢者である.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top