日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
シンポジウム5:高齢者の終末期医療をめぐる諸問題―これからの終末期医療はどうあるべきか?
4.患者の意思を尊重した医療およびケアとは:意思決定能力を見据えて
会田 薫子
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2013 年 50 巻 4 号 p. 487-490

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抄録

米国で確立され日本に輸入された生命倫理学(bioethics)の影響下で,本人の意思の尊重といえば「自己決定」を指すという考え方が日本の医療現場においてもある程度一般化したが,その「自己決定」は日本では馴染みにくいと実感している医療者は少なくない.彼我の社会的・文化的相違を考慮すると,日本の高齢者の終末期医療とケアの分野においては特に,狭義の「自己決定」を超えて本人を尊重する意思決定の考え方が求められているといえる.本人の意思決定能力が減退しても,本人がその人生において大切にしてきたことや価値観・死生観を家族らと医療側が探り,納得できる共同の意思決定を目指すことが必要である.本人の人生の物語り(narrative)への視点を持つことが,その人しか生きられない固有の人生を尊重し,本人にとっての最善を実現しようとする意思決定につながる.そのようにして本人の最善を探りつつ医療者らと家族らが合意したことについて,司直が関与する心配は実質的にはないといえる.

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© 2013 一般社団法人 日本老年医学会
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