目的:認知症患者に対する心理検査は数多く存在する.正確な診断の為には多数の検査を実施することが望ましいが,多忙な日常診療の現場では不可能である.そのため岡山大学病院神経内科で実施した以下11種類の心理検査数削減や合計検査時間短縮を目的に本研究を行った.方法:岡山大学病院神経内科外来において認知症が疑われる患者1,628人と正常者46人に対し11種類の神経心理学的検査を行った.11種類の検査の内訳は知的機能のスクリーニング検査としてmini mental state examination(MMSE),Hasegawa dementia rating scale-revised(HDS-R),frontal assessment battery at bedside(FAB)とMontrieal cognitive assessment(MoCA),情動変容検査としてneuropsychiatric inventory(NPI),Abe's behavioral and psychological symptoms of dementia score(ABS),geriatric depression scale(GDS),やる気衰退検査のvitality index(VI),およびapathy score(AS),日常生活動作を測る検査としてCDR(clinical dementia rating),Alzheimer's disease cooperative study-activities of daily living(ADCS-ADL)である.これらの検査の相関を総当たり方式で比較検討し,さらに検査に要する時間の観点も含め,日常診療における認知症スクリーニングに有効で,かつ患者の負担が軽減できる組み合わせを検討した.結果:知的機能検査同士,知的機能検査とNPI,知的機能検査と日常生活検査,NPIとABS,NPIとGDS,GDSとAS,VIとAS,およびCDRとADCS-ADLは相関を示した.また,検査に要する時間はFABはMoCAより,ABSはNPIより,VIはASより有意に短かった.結論:多忙な日常診療におけるスクリーニング検査としては,MMSE又はHDS-R,FAB,ABS,GDS,AS,ADCS-ADLの6検査の組合せが有用で,患者負担軽減にも有効であると考えられた.