日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
在宅医療患者における予後関連因子について
盛田 真樹
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 52 巻 4 号 p. 383-390

詳細
抄録

目的:在宅医療患者は体力の低下した高齢者や慢性疾患患者が多く,合併症発症や死亡例も見られるが,その予後関連因子は明らかではない.在宅医療患者の予後関連因子を調べた.方法:平成24年1月から平成27年5月にかけての41カ月間に在宅医療を行った290名,平均年齢83歳,男性38%,末期進行癌患者を除外した.全在宅医療患者について日常生活動作能力(activities of daily living;以下ADLと略す)各項目,要介護認定における認知症高齢者の日常生活自立度(以下自立度),誤嚥の有無及び心疾患既往を検索し,有害事象(以下イベントとす)や生存との関係を調べた.結果:主病名は認知症,脳梗塞後遺症で約半数を占める.ADL各項目については,総じて食事は自力摂取可能も食事以外は介助が必要で,また簡単な挨拶は可能もコミュニケーションまでは困難な者が多く,歩行・自力トイレ可能な者は約半数で,自立度はIIIaが最も多かった.全在宅医療患者290名に対して肺炎63名(21.7%)を主とした非心脳血管イベント(non cardiovascular cerebrovascular event;以下NCVEと略す)103名(35.5%),うっ血性心不全22名(7.6%)を主とした主要心脳血管イベント(major adverse cardiovascular cerebrovascular event;以下MACCEと略す)48名(16.6%),死亡者61名(21.0%).非心脳血管イベントに対して,ADLの全項目,自立度及び誤嚥が,生存に対しては食事自力摂取,歩行,会話,トイレ及び誤嚥が有意に関連した.特に誤嚥が肺炎死と関連した.MACCEに関しては,服薬自立及び心疾患既往が関連した.判別分析では,非心脳血管イベントに食事自力摂取・歩行・誤嚥・performance activity・着替え,死亡に食欲・会話・コミュニケーション,MACCEに食欲が有意に関連した.結論:在宅医療患者の非心脳血管イベント,生存に関してADLにおける種々の要因及び認知機能が関連し,とりわけ誤嚥による肺炎死への関与が考えられた.

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top