日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
尿失禁を有する在宅要介護高齢者の排尿手段に関連する要因
田中 久美子竹田 恵子陶山 啓子小岡 亜希子中村 五月
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2016 年 53 巻 2 号 p. 133-142

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抄録

目的:尿失禁を有する在宅要介護高齢者(以下,高齢者)の排尿状態,及び家族介護者(以下,介護者)の状況を明らかにし,排尿手段に関連する要因を明らかにする.方法:尿失禁を有する高齢者とその介護者を対象に質問紙調査を実施した.結果:分析対象者は101組であった.排尿手段は,トイレとおむつの併用が69人(68.8%)と高率で,トイレ回数が4回未満で失禁量が「中等量」の者,4~8回未満で失禁量が「少ない」者が有意に多かった(p<0.05).要介護4・5の高齢者の状態と介護者の状況のうちχ2検定(又はFisherの直接確率検定)で排尿手段と関連があった8項目を独立変数とし,排尿手段を従属変数とし,ステップワイズ法を用いた多重ロジスティック回帰分析を行った.高齢者が「トイレを正しく使用できる」(p=0.004),「移動動作の自立度が高い」(p=0.028),介護者が「トイレで排泄できなくても仕方がないと思わない」(p=0.027)が,トイレでの排尿に強く影響していた.結論:高齢者のトイレでの排尿は,高齢者の身体機能だけでなく,介護者の排泄介護の考え方にも影響を受けていた.排尿援助では,高齢者の身体機能を維持し介護者を支援することと,必要に応じて残尿を測定するなど膀胱機能をアセスメントし医師と連携することが重要である.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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