日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢者患者の栄養サポート終了時における摂食嚥下状態の検討~急性期病院内科の現状~
庭野 元孝
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2016 年 53 巻 3 号 p. 238-243

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抄録

目的:急性期病院内科に入院した高齢者患者の栄養サポート前後すなわち栄養サポートチーム(NST)介入開始時と終了時における摂食嚥下状態を藤島摂食・嚥下能力のグレードで検討して,急性期病院内科の栄養サポート終了時における摂食状態の臨床報告を目的とした.方法:2013年4月から2年間,NSTが介入した入院患者394人のうち65歳以上の患者は377人(83.5±9.1歳,男性204人80.8±10.2歳,女性173人86.9±8.7歳)で,その77%を占める内科患者を肺炎群と非肺炎群に分け,NST介入前後の嚥下機能を藤島摂食・嚥下能力のグレードで評価して,介入終了時の栄養法を検討した.結果:患者をGr.3以下群,Gr.4以上群に分けて全体の中で改善群が占める割合を比較すると,肺炎群で統計学的有意差を認め,非肺炎群では有意差を認めなかった.NST介入終了時にGr.6の肺炎群28人中2人がそれぞれ膿胸と肺炎重症化,Gr.7以上の肺炎群53人中1人が肺炎重症化で在院死し,Gr.6の非肺炎群18人中2人がそれぞれ尿路感染症・脳梗塞,Gr.7以上の非肺炎群33人中1人が尿路感染症で在院死したが,それ以外は全員経口で退院した.肺炎群・非肺炎群ともにNST介入終了時にGr.5以下の患者のうち,経口退院の割合はおよそ3人に1人,在院死は4人に1人で,それ以外の患者は代替栄養が必要だったが,経口退院の患者・家族は,代替栄養を選択せずに自然な形での経過観察を望んだ方々だった.結論:延命重視,自己決定困難な成人患者への医療行為の代理決定の規定がないこと,代替栄養法にこだわる現場の医療者と家族の心理等々の理由により,嚥下機能障害を持つ高齢者患者への栄養療法の選択に逡巡する東京圏の急性期病院内科の実情を報告した.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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