日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年医学の展望
高齢者における頻脈性不整脈に対する緊急カテーテルアブレーション治療
高橋 健太岩崎 雄樹清水 渉
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2017 年 54 巻 3 号 p. 314-321

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抄録

頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーションは,特に発作性上室性頻拍や通常型心房粗動に対する根治療法として様々な頻脈性不整脈に有効である.しかし,高齢者においてその有効性および安全性は完全に解明されていない.方法:本研究では80歳以上の連続する64例を対象とし,生命を脅かす,血行動態が破綻する,虚血の誘因となる重篤な頻脈性不整脈に対して緊急でアブレーションを行った群(緊急アブレーション群,n=28)および待機的にアブレーションを行った(待機的にアブレーション群,n=36)の2群とし,カテーテルアブレーションの成功率,合併症,再発率,生命予後を2群間で比較した.結果:治療対象となった不整脈は2群間で差はなく,緊急アブレーション群(57%)と待機的アブレーション群(56%)の両群で通常型心房粗動が最も多かった.待機的アブレーション群と比較して,緊急アブレーション群の患者は高齢であり(84±3 vs 82±2,p=0.001),基礎心疾患を有している患者が多く(68% vs 17%,p<0.001),左室駆出率も低値であった(45%±15% vs 68%±10%,p<0.001)であった.急性期成功率(100% vs 100%,p=1.00)およびその後の再発率(4% vs 14%,p=0.22)は2群間で同等の結果であった.また,緊急アブレーション群で2例(穿刺部血腫,褥瘡),待機的アブレーション群で2例(穿刺部血腫,CO2ナルコーシス)にアブレーションに関連した非致死的合併症を認めた(7% vs. 6%,p=1.00).入院期間中の死亡例はいなく,追跡期間中の死亡率は緊急アブレーション群および待機的アブレーション群で差がなかった(年間6.0% vs. 年間3.9%, log-rank P=0.38).結語:80歳以上の高齢患者であっても,重篤な頻脈性不整脈に対する緊急カテーテルアブレーションは安全に施行可能であり,その後の洞調律維持効果も高く,予後良好であった.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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