日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者の体重減少ならびにアルブミン低値と死亡との関連とその影響要因―システマティックレビュー―
矢野 朋子樺山 舞神出 計
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2020 年 57 巻 1 号 p. 60-71

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抄録

目的:これまでの疫学研究の結果から地域在住高齢者の体重減少ならびに血清アルブミン低値の死亡に関わる影響を検討し,そこに関わる食行動や嚥下機能,食形態の要因を検討することを目的とした.方法:MEDLINE,Cochran Library(CENTRAL),Web of Science,CHINALから検索式を用いて3,812文献を抽出し,このうちコホート研究で65歳以上の地域在住高齢者を対象とし,体重減少群ならびに血清アルブミン低値群と対照群を設定した研究の中で観察期間中の死亡を分析した研究を対象とし,メタ解析を実施した.さらにはその関連に影響を与える要因を検討した.分析方法は,体重減少ならびに血清アルブミン低値群と対照群の2群者数と死亡者数から相対リスク比と95%信頼区間を算出し分析した.結果:地域在住高齢者の体重減少と死亡が検討された文献検索の結果,1,180件を抽出し,条件に合う11件を分析した.メタ分析の結果は,体重減少群が維持群に比べて,死亡率を1.69倍高くする有意な結果を示した.また血清アルブミン低値の文献検索の結果,2,632件を抽出し,10件を分析した.結果,血清アルブミン低値群が保持群に比べて,死亡率が1.92倍高かった.さらに,食行動や嚥下機能,食形態の関連要因は,今回抽出した文献内で明らかにされていなかった.結論:地域在住高齢者のコホート研究をメタ分析した結果,死亡率は対照群に比べ体重減少群が1.69倍,血清アルブミン低値群が1.92倍高い可能性がある.食行動や嚥下機能,食形態の関連要因について,検討された研究がなかったため,今後,高齢者の体重減少ならびに血清アルブミン低値から死亡に至るプロセスの中で影響を及ぼす栄養関連項目を明らかにし,高齢者の在宅療養生活の継続を可能にすることへのエビデンスを蓄積し,今後介入していくことが必要となると考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本老年医学会
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