日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
血液透析閉経後女性の大腿骨近位部骨折症例の検討―踵骨定量的超音波検査,中手骨骨塩定量,FRAXRから―
今中 俊爾柴崎 泰延
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2020 年 57 巻 1 号 p. 81-88

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抄録

目的:血液透析大腿骨近位部骨折症例をDXAを使用せず,実臨床で容易に利用できる検査からその特徴を検討する.方法:1年毎に4回,踵骨定量的超音波検査[QUS,A-1000 EXPRESS;BUA(超音波減衰係数)およびSOS(超音波伝搬速度)を使用]を施行,1回以上受診した閉経後女性40例(58~90歳)を対象とした.また,一部の症例で中手骨骨塩量(DIP)およびFRAXRを測定し,これら3者の結果を骨折群,非骨折群で解析した.結果:大腿骨近位部骨折は5例で発症した.QUSによる骨折群,非骨折群の平均値(1~4回)は,それぞれBUA 80±7 dB/MHz,88±9,SOS 1,491±14 m/sec,1,506±22であった.両群に有意差はなかったが,骨折群のBUA,SOSの最大値はそれぞれ91 dB/MHz,1,510 m/secを示し,非骨折群のほぼ平均値に相当した.DIP(YAM,%)は,骨折群4例は55~67%を示し(25例の非骨折群44~91%と有意差なし),FRAXRは,骨折群4例はmajor osteoporotic fracture(MOF)は12~55%,hip fracture(HF)は3.3~9.3%を示した(26例の非骨折群MOF 4.4%~33%,HF 0.3~18%と有意差なし).結論:今回は少数例の検討であるが,DXAを使用しない3者のデータはいずれも骨折群で有意な特徴を得られず,それぞれ単独の検査で骨粗鬆症性骨折リスクの高い症例を検出することはできなかった.今回,骨塩量を使用しない超音波法(踵骨)(BUA,SOS)およびFRAXR(MOF,HF)に加えて,骨塩量を使用する末梢皮質骨(DIP)を測定した.血液透析例では,骨塩量測定の意義は高まっているが,骨質の評価も求められており,骨量以外のモダリティを今後検討する必要があると思われた.

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