日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
介護老人保健施設入所者におけるプロトンポンプ阻害剤と低ナトリウム血症の関連
後藤 正勝堺 麻理
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2023 年 60 巻 2 号 p. 153-157

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抄録

目的:Proton pump inhibitor(PPI)は広く使用され,その効果も周知されている.しかしながら,その副作用の報告も増加している.高齢者は多剤服用の傾向があり,種々の要因により低ナトリウム血症を惹起しやすい.介護老人保健施設という特殊な環境下では薬の長期服用になる傾向がある.そこで,われわれはPPIを服用する介護老人保健施設入所者は低ナトリウム血症を呈することを示す目的で本研究を行った.方法:介護老人保健施設シルバーガーデン入所者をPPI服用していない対照群とPPIを6カ月以上服用しているPPI群の2群に分けた.PPI群をさらにランソプラゾール群(LPZ群)とその他のPPI群に分けたが,その他のPPI服用者は数が少ないので除外した.対照群とLPZ群の2群で採血検査結果を比較検討した.またLPZ群ではLPZ服用中止して1カ月後に血清ナトリウム値を測定して中止前の値と比較した.結果:LPZ群は血清ナトリウム値が対照群に比し低く,低ナトリウム血症を示す割合が高かった.その他の生化学的血液検査は対照群とLPZ群の間で有意な差はなかった.LPZ服用中止後1カ月で血清ナトリウム値は有意に上昇したが対照群の値より低く完全回復には至らなかった.結論:6カ月以上LPZを長期服用した介護老人保健施設入所者では低ナトリウム血症を惹起する割合が高かった.

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© 2023 一般社団法人 日本老年医学会
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