日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
総説
認知症診療における脳画像診断の有用性
清水 聰一郎
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2023 年 60 巻 2 号 p. 93-102

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抄録

皆様御存知の通り,2023年1月アメリカのFDAにおいてAlzheimer病(Alzheimer's disease:AD)の疾患修飾薬「レカネマブ」が「アデュカヌマブ」に次いで承認された.現状はまさしくAD克服の前夜といった様相である.そのため,今後ADを含む認知症の早期診断・鑑別はさらに重要となってくる.代表的な4大認知症:Alzheimer病(Alzheimer's disease:AD),血管性認知症(Vascular Dementia:VaD),Lewy小体型認知症(Dementia with Lewy bodies:DLB),前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)では,その治療法や介護が異なってくるため,正確な鑑別診断が必要である.

特に,認知症の原因疾患としてADでさえも,若年性ADでは特徴的なMRI所見を取らないことや,高齢者における混合病理の存在から,形態画像のみでは正確な診断は容易とは言えない.そのため,CT,MRIの形態画像のみならず,血流低下や代謝低下部位を早期から観察することのできる脳血流SPECTやDaTイメージング,MIBG心筋シンチに代表される機能画像が重要になってくる.

本稿では,日常臨床で遭遇しやすい認知症の画像診断による鑑別について総論的に述べる.超高齢化社会を迎える本邦では,老年科医として認知症患者を診察するのは避けては通れない道である.本稿を通し,皆様が認知症に少しでも興味を持って頂ければ幸いである.

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© 2023 一般社団法人 日本老年医学会
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