日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年医学の展望
地域在住要支援・要介護高齢者に対する通所リハビリテーションの役割
柴 隆広沢谷 洋平浦野 友彦
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2024 年 61 巻 2 号 p. 114-122

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抄録

本邦では超高齢社会の進行に伴い,要介護高齢者の増加も予測されている.要介護高齢者の増加は医療・介護費の増加や老老介護,介護サービスの人材不足,社会的資源の不足に伴う介護難民など多くの問題の発生が予測されている.そのため,厚生労働省は高齢者の尊厳保持と自立生活支援の目的のもと,可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制である「地域包括ケアシステム」を推進している.

その一角を担う介護保険サービスとして通所リハビリテーション(通所リハ)が挙げられる.通所リハは医師や理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)をはじめ多くの専門職で要介護高齢者の心身機能や日常生活動作(ADL)の維持・向上を通じて,要介護高齢者に対して「活動」と「参加」への介入が求められている.また,介護者の介護負担の軽減としての機能も果たしている.

要介護高齢者の心身機能の維持や活動,参加の介入において多職種連携が重要である.通所リハの多職種連携の柱として「リハビリテーション会議(リハ会議)」が挙げられる.リハ会議とはご利用者のニーズや生活目標に対して,関係者全体で問題点の整理や解決法を模索し,リハビリテーションの方針を協議する場である.また,介護予防の実現には「リハビリテーション・機能訓練,口腔,栄養の取組の一体的な推進」が挙げられており,通所リハにおいても管理栄養士や歯科衛生士などを含めた多職種連携による高齢者総合評価が求められている.

コロナ禍における活動自粛は高齢者において大きな健康被害が危惧されている.そのような状況下において,栄養・身体活動・社会参加に対して多職種で介入が可能な介護保険サービスである通所リハは今後の我が国における要支援・要介護高齢者の健康維持と在宅生活の支援において重要な施設となることが期待される.

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