目的:本研究の目的は,都市部および農村部在住の高齢女性を対象に,居住地域の違いによってHealth-related Quality of Life(以下HRQOLと略す)とその他の健康関連要因との関連性に差異が認められるか検討することである.方法:本研究の参加者は都市部および農村部在住の高齢者で,除外基準に該当しなかった236名の高齢女性を解析対象とした.HRQOL,身体機能,体組成,疼痛,精神・睡眠状態,認知機能を測定し,各居住地域による2群比較を実施した.さらに,相関分析,重回帰分析を用いて,居住地域ごとにHRQOLの影響要因を検討した.結果:各居住地域による2群比較の結果,都市部と比較して農村部の高齢女性では,教育歴,握力,膝伸展筋力,長座体前屈距離,片脚立位保持時間,歩行速度,骨格筋量が低値を示し,Timed Up and Go test,体脂肪量が高値を示した.HRQOLおよびその他の項目では,都市部および農村部の2群間比較において有意差を認めなかった.一方で,HRQOLの影響要因には,都市部および農村部の高齢女性に共通して疼痛強度と中枢性感作関連症状(Central Sensitization-related Symptoms:以下CSSと略す)の重症度の指標であるCentral Sensitization Inventory-9(以下CSI-9と略す)が選択された.結論:都市部と比較して農村部の高齢女性では,全ての身体機能の測定値が有意に不良な値を示したが,HRQOLの影響要因には各居住地域に共通して疼痛強度とCSI-9が選択された.このことから,都市部および農村部において高齢女性のHRQOL維持・向上を図るためには,疼痛とCSSの軽減を目的とした介入が有用であり,農村部の高齢女性では身体機能の向上を目的とした取り組みの重要性が示された.