抄録
本邦においても食生活の改善を主とする生活環境の変化により, 近年胆嚢疾患は増加しつつある. また一方, 検査法の進歩により, 臨床的にも胆嚢疾患が成人病の一環として重要な位置を占めるようになってきた.
我々は通常の社会生活を営む健常人を対象として経口胆嚢造影の集団検診を実施し, 異常胆嚢所見の出現状況, その加令との関係, 体重との関係, 胃十二指腸X線所見との関係を検討した. さらに肝機能検査, 糖負荷試験, 血圧測定, 心電図検査等を併せて施行し, 異常胆嚢所見と, これらの検査異常の合併状況について検討した.
経口胆嚢造影は胆嚢疾患のスクリーニングテストとして広く用いられているが, 造影剤の通過, 吸収に問題があり, 造影陰性, 造影不良例については再検によって陽性像または正常造影濃度の得られることが多い.
体重は胆嚢像と関係が深く, 造影陰性, 造影不良, 拡大, および収縮不良例は, 肥満, 過体重例に多く, 変形および小胆嚢はやせたものに多い. 胆石はやせたものには少ない.
胃十二指腸X線所見との関係では, 術後胃に造影陰性, 造影不良, 拡大例が多くみられるが, その他は特徴的な関係に乏しい.
異常胆嚢所見を示したものの臨床検査は, GTT異常23.5%, 高コレステロール23.5%, 高アルカリフォスファターゼ27.7%, 高血圧27.5%, 心電図異常37.2%で, 胆道系と直接関係するアルカリフォスファターゼ高値, コレステロール高値例とともにGTT異常, 高血圧, 心電図異常の合併が高率である. これらの合併疾患は胆石保有例よりも造影不良や拡大胆嚢例に多くみられる. したがって経口造影胆嚢像の分析の際は, 胆石その他の器質的変化の追求にとどまることなく, 合併する糖代謝異常や, 心疾患の存在を考慮する必要がある.