日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老人の体温-皮膚感覚点分布頻度に及ぼす加齢の影響
村田 成子入来 正躬
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1974 年 11 巻 3 号 p. 157-163

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抄録
老人では暑さに対する反応より, 寒冷に対する反応がより顕著に障害され, その体温調節反応の特長は, 外来刺激感受性の鈍化から招来される反応発現の遅延であるとされている. しかし, この様な老人の体温調節反応を特長づける調節機構についての詳細な検討はなされていない.
一方皮膚感覚については, 感覚点の分布密度が, 温点, 冷点, 痛点, 圧点などについて1920年代に詳細に検討されているが, その後は皮膚感覚についての研究は, 閾値の問題, 感覚神経の電気生理学的検討などが主な問題点とされて来ている. 皮膚感覚の加齢による変化についても, 痛覚閾値の変化などを検討した報告はあるが, 皮膚の感覚点の問題を検討した報告はみられない.
老人の体温調節機構を解明して行く最初の試みとして, 老人の外来刺激感受性の鈍化に当然予想される皮膚自身での感覚受容の変化が, 皮膚感覚点頻度の増減の問題として把握し得る面があるか否かを検討するため, 平均年齢73±4歳の老人グループ30名と平均年齢26±5歳のコントロールグループ20名につき, それぞれ身体8ヵ所で冷点及び痛点の頻度を測定した. 得られた結果は次の通りである.
1) 老人グループのコントロールグループに対する冷点及び痛点の頻度の減少は, 1ヵ所の痛点を除きすべて有意であった.
2) 冷点の頻度は, 躯幹部で高く, 四肢末梢部で低い. 老人グループでは下腿部および足甲部で冷点の頻度の減少が大きい.
3) 痛点の頻度の部位の差及び老人グループでの減少の部位の差は, 冷点ほど著明でないが足甲部はコントロールグループで痛点の頻度が低く, かつ老人での減少も顕著であった.
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© 社団法人 日本老年医学会
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