日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老若パラビオーゼ白鼡における肝細胞の動向
長谷川 勝美
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1977 年 14 巻 2 号 p. 121-127

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抄録
老化の本質は実質細胞の減数と, それに対する再生機能の低下であり, この機序の解明のために, 呑竜系雄白鼡を用いて老若パラビオーゼを作製し, このうち長期にわたり健康状態にあった15組について, 老側, 若側の肝細胞の動向に詳細な検索をくわえた. その結果, 1) 肝重量は老若パラビオーゼによって有意な変動を示さなかった. 2) 老若パラビオーゼにより, 若側の変化は極めて顕著であり, かつ有意であった. 即ちパラビオーゼ若側の変化は, 一定視野内肝細胞数の減少, 総肝細胞数の著明な減少, 肝細胞体と核の増大, および2核肝細胞数の顕著な増加, 等を示し, これらの諸変化は, ほゞ対照の単独老白鼡と類似していた. 一方パラビオーゼ老側では, 若側の場合とことなり, 対照の単独老白鼡との差は一般に僅かではあるが, 肝細胞体と核の大きさは有意に小形化し, 対照の単独若白鼡の所見の方向にずれている点は否定できない.
以上の結果より, すくなくとも肝細胞における所見では, 老若パラビオーゼによって, 若側パートナーの肝細胞の増殖が, 老側パートナーから分泌される分裂抑制因子によって著明に抑制される点, および若側の肝細胞が, その減数と, 老側の肝細胞の機能の過重を代償している点などを推定した.
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