日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
内頚動脈サイフォン部の石灰化と脳血管障害
放射線学的ならびに組織学的研究
山之内 博東儀 英夫朝長 正徳亀山 正邦
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1978 年 15 巻 2 号 p. 158-164

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抄録

60歳以上の100剖検例の内頚動脈サイフォン部の石灰化について, 放射線学的ならびに組織学的に検索し, 同部の石灰化と脳の動脈硬化, 脳の血管性病変との関連を検討し, 以下の成績を得た.
1) サイフォン部の石灰化は対象例の80%に認められた. 点状石灰化を軽度, 塊状あるいは大塊状石灰化を高度石灰化とすると, 高度石灰化は41%に認められ, 加齢とともに頻度が高くなる傾向がみられた. 石灰化の性差および左右差は認められなかった.
2) サイフォン部高度石灰化は高血圧者に有意の高頻度でみられた. が, 生前の血清総コレステロール値との間には有意の関係が認められなかった.
3) サイフォン弯曲部における石灰化は内腔凹面に強く, 内膜の肥厚は内腔凸面に強い傾向がみられた.
4) サイフォン部に高度石灰化のみられる例では, 石灰化が無いか軽度の群に比し, 内頚動脈の intracranial portion および脳動脈に高度狭窄を示す頻度が有意に高かった.
5) 脳に血管性病変を有しないものは, 石灰化がないか, 軽度の群に有意に多かった. 梗塞性病変, ことに中小の脳梗塞は, 高度石灰化群に有意に多くみられた. 脳出血とサイフォン部石灰化の程度との間には有意の関係は認められなかった.
6) サイフォン部に塊状または大塊状の高度石灰化を示すものは全て, 生前の頭部単純X線写真で検出されていた. しかし, 点状石灰化の場合には生前, 検出されたものは少なかった.
7) 以上の所見より, サイフォン部の石灰化は脳梗塞の risk factor の一つになり得ると推定され, 頭蓋単純X線写真におけるサイフォン部石灰化像の検出は, 重要な臨床的意義を有すると結論される.

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