日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
閉塞性動脈硬化症の予後について
瀬戸山 隆平佐藤 正典重松 宏小林 宏太田 郁朗大橋 重信三島 好雄
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1978 年 15 巻 6 号 p. 574-579

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抄録
過去20年間に東大第1外科を受診した慢性動脈閉塞は1339例であり, 閉塞性動脈硬化症 (以下ASO) 449例, いわゆる Buerger 病 (以下TAO) 890例である. 今回, アンケートを中心に遠隔成績追跡調査を行い, 主としてASOの予後についてTAOと対比して考察を行った.
ASOは最近増加の傾向にあり, 男性に多くみられ, 51歳以上の発症が約80%に及んでいる. TAOが20~30歳代の男性に多くみられるのと対照的である. 冷感, 疼痛や間歇性破行を初発症状とするものが多く, 閉塞部位は末梢側にもみられるが, TAOと異なり中枢側の限局的な閉塞例が約30%にみられ, 血行再建術の適応例が増加しつつある.
臨床検査所見, 合併症, 併存症そして死因等からみると, 本症は高血圧症や高コレステロール血症, 糖尿病, 臓器血管合併症と密接な関係を有しているといえる.
本症の死亡率もTAOに比し極めて高く, 症状初発より死亡までの期間は3年以内14.1%, 5年以内28.7%, 10年以内33.9%, 10年以上40.2%に及んでいる. 死因別にみると81死亡例中, 心疾患50.6%, 脳血管障害16.1%, 腎不全4.9%と脳・冠・腎等の重要臓器血管障害が70%をも占めている.
全身性の動脈硬化性病変に対する治療法が確立されていない今日, 生命の予後の面からは薬物療法, 運動療法, 食事療法, 禁煙, そして冠動脈バイパスや高コレステロール血症に対する腸管バイパス等の外科療法などを行い, 直接死因とつながる臓器血管合併症の出現もしくは進展を抑える努力が必要といえる.
患肢の予後という観点からは可能なら血行再建術を行い, 手術適応がない場合でも対症療法と併せて患肢の保護が必要である.
本症は生活様式や食餌の変化, 平均寿命の延長などに伴い更に増加すると思われ, 全身の動脈硬化性病変に対する治療法, 患肢に対する外科療法の進歩が今後の課題である.
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