日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
ラット脳皮質に分布する微小血管周囲細胞 (F.G.P.) の経年変化に対するビタミンEの影響
間藤 方雄大河原 重雄
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1981 年 18 巻 3 号 p. 169-178

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抄録

老化に伴ない生体内には過酸化物が蓄積するが, ビタミンEは生体内過酸化物の生成を抑制することが知られている. 本研究は, 著者等の見出した脳の微小血管周囲に分布する細胞に焦点を合せ, その細胞の経年変化に対するビタミンEの効果を, ビタミンE欠乏飼料で飼育したグループとユベラニコチネートを含む飼料で飼育したグループとに分け形態的に比較検討した.
同細胞は, 著者等の研究から, 特有の経年性変化を示すこと, 脳室事内に投与されたベロキシダーゼを膠細胞よりはるかに強く特異的に摂取すること, バゾプレッシンによって脳内異物に対する摂取能が著しく上昇すること等が明らかにされ, 脳の“清掃細胞”とも呼ぶべき細胞である. 従って本細胞の退行は, 脳の自浄作用の低下を意味している.
本研究に於て, ビタミンE欠乏飼料で飼育したラット (雄) では, 生後8カ月乃至10カ月に, 同細胞の著しい退行像が屡々見出されたが, ユベラニコチネート含有飼料によって飼育されたラットでは, 退行変化の出現は極めて少なかった. ビタミンE欠乏時に於ける同細胞の細胞内器官を精査すると, 膜系一般のコントラストが低下し, 就中, 細胞内顆粒の限界膜に障害があると考えられる所見が得られた. また, ミトコンドリアの膨化が著明であった. 組織化学的には, ビタミンE欠乏飼料により飼育されたラットのF.G.P.に含まれる一部顆粒に酸性フォスファターゼ活性の上昇がある. 更に, 本細胞の退行に伴ない, その周辺に, 膠原線維の出現, 増生を認めた. 以上の如きビタミンE欠乏時のF.G.P.の変化は, 脳微小血管からの栄養吸収をさまたげ, 脳内代謝産物の処理に不全を招くことが想像される. 一方, ユベラニコチネート含有飼料飼育ラットにかかる変化の少なかったことから, ビタミンEは本細胞に有効に作用することが推論された.

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