日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳梗塞の機能回復
ADLと急性期CT所見
米山 公啓
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キーワード: 脳梗塞, 年齢, 脳萎縮
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1983 年 20 巻 6 号 p. 476-484

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抄録

脳梗塞患者の機能回復を急性期に推定するため, 頭部CTスキャン上の低吸収域の大きさ, 脳室拡大, 皮質萎縮の程度, 年齢, 再発作の有無と発症8週後のADLと比較検討した.
対象は男65例, 女31例の計96例で, 平均年齢64.1歳, うち, 初回発作は78例, 対照群は, 神経学的に異常をみとめない男44例, 女38例計82例で平均年齢は53.0歳である.
初回発作例をCT上の低吸収域の大きさから低吸収域をみとめない群 (N群), 基底核付近に小さな低吸収域をみとめる群 (S群), 大脳皮質を含む大きな低吸収域をみとめる群 (L群) の3群に分類した. 脳室の拡大は, Meese らの方法に準じ, 皮質萎縮は, シルビウス溝および頭頂脳溝巾の合計を測定し, 百分率で求めた. ADLは, Rankin らの5段階評価によった.
L群に8週後のADL不良例が多く, N群には良好例が多い. また, 60歳未満群に8週後のADL良好例が多く, 70歳以上群には不良例が多かった. 発症1週後のADLが良好な例では, 8週後のADLも良好であった.
側脳室の拡大, 皮質萎縮の程度は対照群, 梗塞群とも加齢につれ, 有意に増強をみとめとくに梗塞群にその傾向が強かった. (側脳室前角尖端間距離/同部位最大内径)×100が32.1%以上 (障害側頭頂部脳溝巾の合計/側脳室巾測定部最大内径)×100が2.4%以下, あるいは9.4%以上の例は, 8週後のADLは不良であった. 再発作例は, 初回発作例に比べ, ADL不良例が多く, 側脳室拡大の程度も強かった.
以上より, 急性期脳梗塞の予後判定にあたり, 年齢, 発症時の状態, CT上の低吸収域の部位, 大きさなどの他, 脳室拡大, 皮質萎縮の程度も参考にすべきと思われた.

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