抄録
60歳以上の老年者で, 耐糖能異常を示した387例について, 経口血糖降下剤及びインスリン使用例での心筋梗塞 (MI) 発生頻度を検討した.
I) 耐糖能異常者全例についてみると, MIの頻度はトルブタマイド (T) 群及びTを含むスルフォニルウレア (SU) 群とも, 未使用 (F) 群に比べ有意に高率で, F群とインスリン群では差を認めなかった.
II) 冠動脈の有意狭窄 (内腔の狭窄が75%以上) の有無に分けて, 治療法別のMI発生頻度をみた.
1) 全例では有意狭窄を有す例では, MIはT群, SU群ともF群に比べ高率で, 有意狭窄の無い例では差を認めなかった.
耐糖能異常を軽度異常 (MGI), 糖尿病 (DM) に分けた場合, MGIの有意狭窄あり例では, T群のMIはF群に比べ有意に高率であった. DMでは, 有意狭窄あり例及びなし例とも治療法別の差を認めなかった.
2) 耐糖能検査時年齢を老年前期 (75歳未満), 後期 (75歳以上) に分けて, 同様の検討を行った. 全例についてみると, 老年前期では, 有意狭窄あり例及びなし例とも, F群, T群でのMI頻度に差がなく, 老年後期では, 有意狭窄あり例のT及びSU群のMIはF群に比べ高率であった. 有意狭窄なし例では差は認めなかった. MGI, DM別でみると, 老年前期のMGIでは, 有意狭窄あり例, なし例ともT群とF群で差はなく, 後期では, 有意狭窄あり例で, T群のMIはF群に比べ高率であった.
以上, 老年者のMGIで, かつ冠動脈狭窄のつよい例で, T及びTを含むSU剤服用がMIの発生と関連している結果を得た. 特に, 75歳以上の高齢者で, これらの血糖降下剤の投与については慎重であるべきである.