日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
施設内老人の障害度と基礎疾患
寝たきりの原因分析
杉浦 昌也鈴木 雄次郎渡辺 千鶴子上田 慶二
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 22 巻 6 号 p. 510-515

詳細
抄録

慢性障害老人の障害度とくに寝たきり老人の直接原因と合併疾患を施設内老人を対象として調査した.
すなわち対象は東京都養育院特別養護老人ホーム在住の540例 (男174, 女366) で年齢は62~101歳 (平均83.8歳) である. 疾患はI神経系, II運動器系, III痴呆, IVその他に分類し, 身体の障害度は歩行機能で4種に分類した. 4度寝たきり, 3度ベッド周囲, 2度歩行器, 車椅子等の室内移動, 1度独歩である.
結果: (1) 障害度の分類. 4度182例 (33.7%, 男女比43:139), 3度52例 (9.6%, 17:35), 2度169例 (31.3%, 48:121), 1度137例 (25.4%, 66:71) であった. (2) 障害度と年齢. 4度の割合は90歳代で40%以上にみられた. (3) 障害度と疾患の対比. 4度では神経系疾患が158.8% (289/182例) にみられ, 運動器疾患は67.6% (123件), 内臓諸疾患は129.7% (236件) にみられた. 3度では52例中にそれぞれ101.9%, 69.2%, 126.9%, 2度では169例中に87%, 72.2%, 155%, 1度では137例中86.1%, 38.7%, 183.2%で寝たきりでとくに神経系の頻度が高い. 一方内臓疾患は1度に最も高頻度であった. (4) 寝たきりの原因. 4度182例中, 神経系51 (28%) 運動器38 (20.9%), 痴呆11 (6%), これらの合併74 (40.7%) で計174例 (95.6%) まで説明できる. 単一疾患と複合疾患 (同系統, 他系統合せ) の比は79対103で後者が高率であった.
以上, 慢性障害老人の重要な指標である歩行障害に注目すると寝たきりの原因は従来の報告のごとく神経系とくに脳血管障害と運動器系とくに大腿骨頚部骨折の関与が強いが, その他にも多数の疾患が関与し, それらの複合病変が高頻度なことを指摘した.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top