日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
多変量解析法を用いた動脈硬化性疾患における Risk factor の検討
川本 敏雄佐々木 博堀内 至日野 文明大木 正美岡橋 誠西村 正二田妻 進徳毛 宏則野村 洋子平岡 俊仁川西 昌弘坪倉 篤雄梶山 梧朗
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1985 年 22 巻 6 号 p. 550-557

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抄録

陳旧性心筋梗塞症, 狭心症, 脳血栓症などの動脈硬化性疾患を対象に血清脂質, コリンエステラーゼ (ChE), アポ蛋白などの測定を行ない, 動脈硬化症と健常者を判別するのにそれらの因子がどの程度有効であるかについて多変量解析法を用いて検討し以下の成績を得た.
それぞれの動脈硬化症と健常者とを判別する正当率の順位は下記のごとくであった. 1) 陳旧性心筋梗塞症: アポ蛋白A-1/アポ蛋白B, アポ蛋白A-1+A-II/アポ蛋白B, アポ蛋白B, 動脈硬化指数, LDL-コレステロール, ChE/HDL-コレステロール, 総コレステロール, 中性脂肪, アポ蛋白A-II, アポ蛋白A-I, HDL-コレステロール, ChE, アポ蛋白C-II, アポ蛋白C-III, アポ蛋白E. 2) 狭心症: アポ蛋白A-I+A-II/アポ蛋白B, アポ蛋白A-I/アポ蛋白B, 中性脂肪, アポ蛋白A-I, アポ蛋白B, アポ蛋白C-II, 総コレステロール, LDL-コレステロール, 動脈硬化指数, ChE, HDL-コレステロール, ChE/HDL-コレステロール, アポ蛋白C-III, アポ蛋白A-II, アポ蛋白E, 3) 脳血栓症: アポ蛋白A-I+A-II/アポ蛋白B, アポ蛋白A-I/アポ蛋白B, アポ蛋白A-II, 動脈硬化指数, アポ蛋白A-I, アポ蛋白C-II, HDL-コレステロール, ChE, 中性脂肪, ChE/HDL-コレステロール, アポ蛋白C-III, LDL-コレステロール, アポ蛋白E, アポ蛋白B, 総コレステロール.
以上のごとく, 心, 脳動脈硬化症のいずれにおいてもアポ蛋白の正当率は高く, アポ蛋白の測定は他の因子に比較し, 動脈硬化症群と健常者群との判別に有効であると思われた. またアポ蛋白B, 総コレステロール, LDL-コレステロールは陳旧性心筋梗塞症と健常者とを判別するのに有効であったが, 脳血栓症と健常者との判別には有効でなかった. この結果は心, 脳血管における動脈硬化の進行あるいは病態に相違があることを示す1つの成績であると思われた.

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