日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者における悪性リンパ腫
生前に診断しえなかった症例の検討
深山 牧子村井 善郎池淵 研二三輪 哲義森 眞由美
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1985 年 22 巻 6 号 p. 564-567

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抄録

悪性リンパ腫の診断の向上を目的に, 生前診断しえなかった症例の診断に至らなかった原因を検討した. 東京都養育院附属病院における1972年~1983年の悪性リンパ腫の剖検例は38例 (男19例, 女19例, 64~90歳) であり, そのうち7例 (男4例, 女3例, 64~87歳) は臨床的に悪性リンパ腫と診断しえなかった. 7例のうち生前のデータの得られなかった1例を除く6例を, 最近診断された悪性リンパ腫20例の初診時臨床症状, 検査成績と比較検討した. 表在リンパ節は診断例で85%に触知する一方, 診断困難例では33%にすぎなかった. しかしリンパ球数減少, 高LDH血症, 赤沈亢進, CRP陽性などの検査所見は診断困難例に多く認められた. 診断困難例の剖検所見では, 83%がリンパ節外性悪性リンパ腫と考えられ, 全例が stage IVであった. リンパ節外性の臓器や後腹膜リンパ節原発の悪性リンパ腫の診断は困難であるが, 従来よりいわれているリンパ球数減少, 炎症反応などは高頻度に認められ, これらの所見が得られた際には悪性リンパ腫の検索を行うべきものと考える.

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