日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者における多発胃癌の病理学的検討
江崎 行芳廣川 勝昱山城 守也橋本 肇高橋 忠雄紀 健二
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1986 年 23 巻 1 号 p. 73-84

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抄録

老年者 (平均年齢73歳) 胃癌手術512例のうち408例 (80%) が分化型癌であり, 104例 (20%) が未分化型癌であった. このうち多発癌は75例であり, 71例 (95%) が分化型のみの癌巣 (2~5個) から成っている. それ故に, ここでは分化型癌のみを検索対象とした.
分化型多発胃癌は男性に多く (76%), 年代別多発頻度は70歳台が最高 (20%) である. 又, 分化型多発胃癌は各癌巣の深達度による組合せをみると, Mucosal Cancer and Mucosal Cancer の組合せが21例 (30%) であり, Mucosal Cancer and Invasive Cancer は35例 (49%), Invasive Cancer and Invasive Cancer は15例 (21%) であった. 大部分 (79%) が少なくとも1個の粘膜 (内) 癌々巣をもっている. 粘膜癌々巣 (2~4個) のみから成る多発癌21例のうち, 各癌巣中心点相互間の距離が3.9cm以内の14例を選び出し, 各癌巣の最大径, 中心点存在部位について単発粘膜癌49例と対比検討した. これにより, 最大径3cmをこえる単発粘膜癌は多発粘膜癌が衝突した結果, 一つの癌巣となっている可能性が高いことを示唆された.
分化型多発胃癌71手術例のうち, 死亡が確認されたのは30例である. 17例が剖検されており, そのうち4例 (24%) は他臓器原発の悪性腫瘍が死因となっていた. 更に, そのうちの2例が, 胃癌・肝癌・結腸癌, 胃癌・食道癌・結腸癌の3重癌であった.

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