日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
ヒト大胸筋, 小胸筋の年齢変化についての微計測的研究
佐藤 秩子田内 久
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1987 年 24 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

乳癌手術時に摘出された各10年代あたり20~40例の日本人女性の大胸筋 (29~81歳) 180例, 小胸筋 (26~80歳) 200例を対象とし, フォルマリン固定, パラフィン切片において免疫酵素組織化学的手法によりβ-エノラーゼの局在の濃淡により筋線維をタイプI, IIにわけ, タイプ別の年齢変化を微計測的に検討するとともに, 大, 小胸筋における老化様相の差について考察した.
筋重量は大胸筋では60歳以後有意に減少するが小胸筋では減少は有意ではない. 筋細胞数は, 大, 小胸筋のタイプI, II線維とも, 60歳以後有意に減少する.
両筋線維の数の比率は, 小胸筋ではI型が, 大胸筋ではII型が高く, 加齢に伴ってともにI型の割合が増すが, 小胸筋では軽く, 大胸筋では有意な増加を示した.
筋線維 (横断面) の大きさは, タイプIでは小胸筋で60歳以後逐齢的に顕著に増加するが, 大胸筋では70歳以後, 増加は有意であるが比較的軽い. 一方タイプIIは, 大胸筋で年齢差なく, 小胸筋では, 40歳以後有意に減少する. このような成績を, 生命維持に直結する呼吸補助筋としての機能 (タイプI主導型) を持つ小胸筋と, 腕の運動-内転-に関与する (タイプII主導型) 大胸筋との機能の差と関連して考察を施した.

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