日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
大動脈弁閉鎖不全における陰性U波の意義
兼本 成斌今岡 千栄美五島 雄一郎福士 広通
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1987 年 24 巻 4 号 p. 374-380

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抄録

この研究は大動脈弁閉鎖不全症 (AR) に示される陰性U波について加齢の影響を含めて臨床的意義を明らかにすることを目的とした. 当院内科を受診したAR 126例のうち洞調律でU波が示され, 明らかな他の弁膜症を合併しない57例 (男36, 女21) で, 平均年齢は51歳である. 心肺に異常のない11例を正常対照とした. T波とU波の極性により (陽性: P, 陰性: N) 対象をTPUP (15例), TPUN (25例), TNUN (17例) の3群に分類した. 心電図から, R-R間隔, QTc, QaUc, T波とU波の振幅, ÂQRS, SV1+RV5を, Mモード心エコー図から, 左室の収縮期/拡張期のディメンジョン, 左室駆出率 (EF), 心室中隔壁厚, 後壁厚, 左室後壁の収縮/拡張速度, 平均円周短縮速度 (mean Vcf) を計測した. EFは正常対象71.2±3.8, TPUP 66.9±5.4, TPUN 63.5±6.7, TNUN 53.1±10.9%, mean Vcf はそれぞれ1.27±0.12, 1.16±0.12, 1.02±0.14, 0.81±0.15circ/secと各群間で有意差をもって低下した. またT波とU波の振幅にはr=0.533 (p<0.01), U波の振幅とEFはr=0.496 (p<0.01), U波の振幅とmean Vcf はr=0.659 (p<0.01) といずれも有意な正相関関係が示された. さらに, 加齢とともにNUの出現頻度が明らかに増加し, 年齢とEFはr=-0.487 (p<0.01), 年齢と mean Vcf はr=-0.595 (p<0.01) と逆相関関係が認められた. 以上より, ARにおけるNUは, 加齢と共に出現頻度が増加し, 心臓のポンプ機能および心筋機能の低下と密接に関連することが明らかにされた.

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