日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
副甲状腺ホルモンの急性降圧作用に関する研究
若年者および高齢者における比較検討
森本 茂人今中 俊爾荻原 俊男
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1989 年 26 巻 4 号 p. 395-400

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抄録

副甲状腺ホルモン(以下PTHと略す)の血圧に与える影響について若年者及び高齢者において比較検討した. 健常若年者15例 (平均年齢±標準偏差: 20.9±1.7歳, 男性7例, 女性8例) および健常高齢者11例 (78.1±5.9歳, 男性4例, 女性7例) に対して合成ヒトPTH (1-34) の100単位を急速静注負荷すると, これら全ての例において, 一過性の降圧効果を認めた. 血圧の基礎値からの最大降下度は, 収縮期血圧において高齢者群(42.5±13.9mmHg)が若年者群 (8.0±8.9mmHg) よりも有意 (p<0.01) に大きかったが, 拡張期血圧においては高齢者群 (25.5±9.4mmHg) と若年者群 (27.3±10.9mmHg) との間に有意差は認められなかった. 平均血圧における最大降下度は高齢者群 (31.9±8.7mmHg) が若年者群 (20.6±7.6mmHg) よりも有意 (p<0.01) に大きかった. 一方, 血清補正カルシウム値は高齢者群 (9.6±0.2mg/dl) において若年者群 (10.0±0.3mg/dl) よりも有意 (p<0.01) に低下しており, またC端に特異性を有する抗体を用いたRIAにより測定した血清中の内因性PTH値は高齢者群 (270±80pg/ml) において若年者群 (150±80pg/ml) よりも有意の高値を示した. 若年者及び高齢者を合わせた全体例において血清補正Ca値は収縮期血圧の最大降圧値と有意の負の相関 (r=-0.52, p<0.01) を示し, また血清の内因性PTH値は収縮期血圧の最大降圧値 (r=0.61, p<0.01) および平均血圧の最大降圧値 (r=0.42, p<0.05) と有意の正の相関を示した. 高齢者においては外因性PTHは血管拡張作用のみならず, 心機能抑制作用をも有し, これらの作用は高齢者におけるカルシウム代謝異常と関係していることが示唆された.

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