抄録
老年者脳血管性痴呆に対するリハビリテーション (以下リハビリと略す) の有用性を明らかにする場合, リハビリの有無によりその効果を比較検討することが望ましい. そこで老年者脳血管性痴呆でリハビリ実施群 (以下リハ実施群と略す) 21例 (男4例, 女17例, 平均年齢80.0歳) とリハビリをしていない群 (以下非実施群と略す) 20例 (男8例, 女12例, 平均年齢82.3歳) における日常生活動作能力 (以下ADLと略す) と知的機能 (長谷川式痴呆テストを使用) に対するリハビリの効果と予後について比較検討し, 以下の結果を得た.
1) 年齢, 神経症状, 精神症状, 合併症, ADL, 長谷川得点等の背景因子では両群間に有意差はなかった.
2) リハビリ開始の主な原因は脳血管障害再発作42.9%, 廃用性萎縮42.9%, 骨折その他が14.3%であった.
3) リハビリによる効果はADLで有意に改善を示し, それは長谷川得点で10点以上の軽中等度の痴呆例および脳循環代謝改善薬投与例において高い改善率を示した. 長谷川得点それ自体では有意な改善を認めなかったが, ADLとの関係では, その改善が良好な例に長谷川得点の改善が明らかであった.
4) 予後についてはリハ実施群でADLおよび長谷川得点は不変であった. 非実施群ではADLは有意な低下を示し, 長谷川得点は不変であった.
以上より老年者脳血管性痴呆に対するリハビリはADLの改善, 機能維持に有用であり, ADLの改善が良好な例において知的機能の改善が認められた.