抄録
高コレステロール血症治療薬である probucol および pravastain 投与におけるHDLの変化を量的変化だけでなく, 質的変化の面からも検討する為, HDLの粒子サイズや抗アポA-I, 抗アポA-II抗体アフィニティーカラムを用いて分離したHDLの亜分画に相当する lipoprotein A-I without A-II (Lp A-I), lipoprotein A-I with A-II (Lp A-I/A-II) 粒子の変化について検討した.
probucol はHDL-コレステロール, 血漿アポA-I/アポA-II比, 直径10.4nm以上の大型粒子を有意に減少させた. Lp A-I, Lp A-I/A-IIの比率を正脂血症者および probucol 投与前・後で比較したところ, probucol 長期投与ではLp A-Iの比率の減少が著明で, 長期投与におけるHDL-コレステロールの低下はLp A-I/A-IIよりもLp A-I粒子の減少をより一層反映しているものと推測された.
一方, pravastatin 群では, HDL-コレステロール, 血漿アポA-I/アポA-II比, HDL粒子サイズ等は有意の変化を示さなかった.
今後, HDL-コレステロールの抗動脈硬化作用を検討するにあたっては, リポ蛋白の代謝に重要な役割を演じているアポ蛋白の面からHDLをながめることが重要と考えられる. すなわちHDLをLp A-I, Lp A-I/A-IIにわけて, それぞれの代謝や役割を追求することが必要と思われる.