日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
慢性関節リウマチの長期治療中に発見された老年者クッシング症候群の1症例
中本 康朗田淵 義勝佐伯 集一三上 洋荻原 俊男
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1992 年 29 巻 1 号 p. 54-58

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抄録

症例は69歳, 女性. 8年前に慢性関節リウマチと診断され, 以来ステロイド療法をうけていた. 入院時, 中心性肥満, 満月様顔貌, 全身の皮膚・血管の脆弱化があり, 腰椎圧迫骨折, 筋力低下のため歩行不能. 血圧186/100mmHg, 血清K+ 2.8mEq/l, 白血球15,510/mm3, 総コレステロール310mg/mlであり医原性クッシング症候群と診断された. しかし, ステロイド離脱後も血中コルチゾールは高値を維持したため, テキサメサゾン負荷試験, 腹部CT等を実施し, 左副腎腺腫によるクッシング症候群を合併していたことが判明した. 著明な出血傾向により外科的治療は困難なため, メトピロン, オペプリムによる治療を試みたが, 副腎抑制による副作用が強く, 完治には至らなかった. 本症例は慢性関節リウマチに対して長期ステロイド治療をうけていたために, クッシング症候群が長年にわたって見逃され, かつ過剰な内因性副腎皮質ホルモンが慢性関節リウマチの活動性を抑制していたことが示唆される稀な1例である.

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