日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
L-DOPSと降圧薬との併用により改善した起立性低血圧症を伴う高齢高血圧症の1例
中田 幸子大塚 篤弘大石 充守口 篤長野 正広井上 卓夫三上 洋阪口 勝彦荻原 俊男
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1992 年 29 巻 1 号 p. 65-69

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抄録

動揺性高血圧と起立性低血圧を呈する高齢者の一例において, ノルアドレナリンの合成前駆体であるL-DOPSと降圧薬の併用効果を血圧日内変動ならびに受動的起立試験時の心拍数の周波数分析を行う事により検討した. 症例は75歳, 男性. 約15年前より高血圧を指摘されていたが, 2年前より起立時のふらつきが出現. 入院後, 降圧薬投与にて血圧は下降したが, 依然起立性低血圧を認めた. 受動的起立試験では-60/-20mmHgの血圧下降があり, 心拍数の周波数分析にて交感神経系の活性化障害を認めた. 近年開発され起立性低血圧に有効とされているL-DOPSを用いることにより起立時の降圧は減少し (-35/-12mmHg), スペクトル解析でも交感神経系の活性化は改善を認めたが, 同時に血圧上昇が著明となった. 本例に対しL-DOPSとともにカルシウム拮抗薬あるいは変換酵素阻害薬を用い, 高血圧と起立性低血圧の両者をコントロールすることができた.

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