日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者の好中球機能, T細胞機能および両者の関連に関する検討
仲谷 善彰橋本 修萩原 照久堀江 孝至
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1992 年 29 巻 12 号 p. 938-944

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抄録

老年者の易感染性機構の一端を明らかにする目的で, 特に好中球とT細胞の関連に注目し, 血液一般検査で異常がなく, 基礎疾患を有さない70~80歳代の老年者を対象として, 1. 好中球機能 (貪食能, 殺菌能, 走化性), 2. 好中球機能に及ぼすGM-CSFの影響, 3. T細胞機能 (PHA刺激によるリンパ球増殖反応およびGM-CSF産生能) について検討し, 以下の成績を得た. 1. 好中球機能, (1)貪食能: 老年者は若年者と同程度の貪食能を示し, GM-CSFは, 老年者および若年者の貪食能をそれぞれ同程度に増強させた (p<0.01, 0.05). (2)殺菌能: New NBT test により判定した殺菌能は老年者で有意に低値を示した (p<0.001). GM-CSFは老年者および若年者の殺菌能をともに増強させ (p<0.001), さらに老年者の殺菌能は若年者と同程度まで回復した. (3)走化性: 老年者は若年者と同程度のN-fMLPに対する走化性を示した. GM-CSFは単独では走化性活性を示さなかったが, N-fMLPと同時に使用した際, N-fMLP単独よりも走化性を亢進させた (p<0.05). また, その程度は老年者, 若年者とも同程度であった. 2. T細胞機能: PHA刺激によるリンパ球増殖反応とGM-CSF産生能は, 若年者と比較して老年者でそれぞれ有意に低値を示した (p<0.001, p<0.05).
本研究は, 老年者の好中球機能, T細胞機能, およびGM-CSFの好中球機能に与える影響を検討し, リンパ球増殖反応とGM-CSF産生能の低下, およびGM-CSFに対する好中球の正常の反応性を認めた. これらの成績は, 老年者の易感染性機構の一端にT細胞機能の低下が関与していることを示唆したと思われる.

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