日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳血管障害をもつ高齢者患者における胃排出能の検討
トリメブチンの効果を含めて
井上 和彦小畠 敬太郎春間 賢山中 秀彦藤村 二郎吉原 正治隅井 浩治梶山 梧朗
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1993 年 30 巻 1 号 p. 41-45

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抄録

脳血管障害患者の合併症の一つに嚥下性肺炎があり, その原因の1つとして上部消化管の運動低下が考えられている. 今回, 高齢脳血管障害患者を寝たきり状態の患者と介助歩行以上が可能な患者に分け, アセトアミノフェン法による胃排出能を検討し, さらに, これらの患者に対するトリメブチンの効果も検討した. 脳血管障害患者では同年代のコントロール群に比し, 胃排出能は低下する傾向がみられ, 特に, 寝たきり状態の患者では有意に低下していた. 脳血管障害以外の原因で寝たきりとなっている患者群でも胃排出能の低下傾向はみられ, 寝たきり状態は胃排出能を低下させることが示唆された. トリメプチン投与により, 脳血管障害やその他の疾患で寝たきり状態となっている患者の胃排出能は改善傾向がみられ, 特に, 脳血管障害で寝たきりとなった患者群では有意に改善し, 本剤投与はこれらの患者の嚥下性肺炎予防の1つの方法になりうると考えられた.

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