日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
橋本病に悪性リンパ腫, 胃癌及び結腸癌を合併した高齢者三重複癌の1例
新津 望志越 顕高田 雅史梅田 正法
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1993 年 30 巻 11 号 p. 985-989

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抄録

症例は87歳, 女性. 昭和57年より甲状腺機能低下症にて当院通院中であったが, 平成4年11月下旬に左頸部腫脹に気づき超音波検査にて甲状腺内に腫瘤を認めたため12月15日精査加療目的にて入院となる. 入院後甲状腺の生検にて非ホジキンリンパ腫(NHL; 瀰漫性小細胞型, B細胞性) と診断, 左頸部のリンパ節腫脹を認めた他は種々の検査に異常を認めず, Ann Arbor 分類にてII期Aと診断した. 入院時検査所見ではWBC4,400/μl, Hb13.6g/dl, PLT 10.1万/μl, GOT 51IU/L, GPT 31IU/Lで, TSH1.17, F-T4 1.03, F-T3 2.04, マイクロゾームテスト1,600倍であった. また, 病期分類のために行った胃内視鏡検査にて胃体中部にIIa+IIcの胃癌を認め, 組織学的には腺癌であった. コロノファイバーにてもS状結腸にポリープを認めポリペクトミーを行い, 組織学的には中等度分化型の腺癌であった. 1月20日よりCOP-BLAM療法(CPM600mg, VCR1.2mg, ADR30mg day1, PDN40mgとPCZ100mg day 1→10, BLM 7.5mg day14)を開始した. それにより左頸部リンパ節の消失, 甲状腺内の腫瘤の縮小を認め, 2月15日より2クール目開始した. しかし, 2月25日呼吸困難出現し, 諸検査にて心不全, 真菌性肺炎を認めたが, 酸素投与, 利尿剤, 抗真菌剤投与にて軽快した. そのため, 強力な化学療法の継続は不可能と考え3月25日よりVP-1625mg/body 持続経口投与により完全寛解 (CR)となったため4月10日退院した. 現在外来にてVP-16少量持続投与療法を継続中である.
橋本病の経過中甲状腺原発NHLを発症し, 胃癌及び結腸癌を同時に認め化学療法にてCRとなった一例を経験したので報告した.

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