日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
イコサペント酸の臨床的検討
第1報: イコサペント酸エチルエステル製剤投与に伴う血漿脂肪酸の変動と血清脂質に及ぼす効果
嵯峨 孝青山 隆彦
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1993 年 30 巻 4 号 p. 308-316

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抄録

43~85歳 (平均年齢67歳) の男32例, 女22例の計54例の動脈硬化性疾患患者に, 高純度のイコサペント酸エチルエステル (IPA-E) 製剤を12週間経口投与し血漿不飽和脂肪酸濃度変化に及ぼす諸因子の影響と血清脂質に及ぼす効果を検討した.
一日1,800mgのIPA-Eを投与すると, 血漿IPA濃度は有意に増加し血漿DHLA濃度は有意に減少したが, 血漿DHA濃度とAA濃度は有意の変化を認めなかった.
IPA-E投与に伴う血漿IPA濃度およびIPA/AA値の増加量・増加率は投与前の血漿IPA濃度およびIPA/AA値とそれぞれ有意の負の相関関係を認めた. 年齢およびカルシウム拮抗薬併用の有無は血漿IPA濃度やIPA/AAの前値およびIPA-E投与に伴う変動とは有意の関係を認めなかった. 男は女に比し血漿IPA濃度前値が, 糖尿病群および利尿薬併用群は他群に比し血漿IPA/AA前値は有意に高かったが, IPA-E投与に伴う血漿IPA濃度あるいはIPA/AA値の増加は小なる傾向であった. IPA-E投与に伴う血漿IPA濃度およびIPA/AAの変化に及ぼす年齢, 性, 糖尿病, カルシウム拮抗薬あるいは利尿薬併用の有無の影響を投与前値を修正した共分散分析で検討すると, 上記の項目のいずれも有意差を認めなかった.
血漿IPA濃度ならびにIPA/AA値はIPA-E900mg/日投与群でも有意に増加したが, その増加は1,800mg投与群に比し有意に小なるものであった. しかし, IPA-E900mg投与群でも高中性脂肪血症,高コレステロール血症の改善がもたらされ, 血清脂質低下効果には900mg投与群と1,800mg投与群との間に有意差は認めなかった.
以上より, 臨床的にIPAEを投与する際には投与前の血漿IPA濃度やIPA/AA値を考慮する必要がある. また, IPA-Eの少量投与でも血清脂質の改善が期待される.

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