日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
本態性高血圧症患者における運動時腎血管反応の加齢による影響
竹内 聡
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1993 年 30 巻 5 号 p. 354-362

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抄録

本態性高血圧症の患者を対象に, 等尺性運動時の腎血管反応の加齢による影響を検討した. 入院中の高血圧患者48名に, 食塩摂取量を10g/日として2週間以上の準備期間をおいて検査を施行した. 等尺性運動は定滑転車重量法を用い, 最大握力の50%のおもりを3分間牽引させた. 運動前と運動終了時に心臓および腎臓の血行動態を Thermodilution catheter により測定した. 48名の患者のうち, 21名は未治療群として検査の前に降圧薬を一切投与せずに血行動態の測定を行った. 他の12名にはα1遮断薬の Bunazosin 2mg/日を, 残りの15名にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬の Enalapril 5mg/日を検査に先立ち3日間投与した. さらに加齢による影響を観察する目的で, 各群を50歳未満の若年者と50歳以上の高年者のサブグループに分けて検討を行った. 未治療高血圧群では, 若年者, 高年者ともに運動時に腎血流量の低下と腎血管抵抗の有意な増加を認め, その反応に両群間で差は見られなかった. 一方 Bunazosin 群では, 若年者, 高年者ともに運動時に腎血流量や腎血管抵抗の変化は見られなかった. Enalapril 群では, 若年者において運動時に腎血管抵抗の軽度増加が見られたが, 高年者においては有意な変化を認めず, 年齢と運動時の腎血管抵抗 (係数) の変化量との間に負の相関関係が見られた (r=-0.59, p<0.05). また, 血中ノルエピネフリン濃度は3群とも運動時に増加する傾向にあったが, いずれの群においても若年者と高年者との間で差は見られなかった. 以上の結果から, 高血圧患者における等尺運動時の腎血管収縮は, 主としてα1受容体を介したものであり, この反応は加齢により減弱するものと考えられた. 一方, レニン・アンジオテンシン系の腎血管への影響は, 加齢により増大するものと推察された.

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