日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
Parkinson 病で長期臥床中, 大量吐血死をきたした高齢者大動脈食道瘻1剖検例
鈴木 宏昌河合 祥雄岡田 了三林 由紀子金澤 章水野 美邦小幡 賢一塩津 英俊桑原 紀之
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1993 年 30 巻 5 号 p. 387-392

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抄録

81歳, 女性, Parkinson 病として加療8年後に誤嚥性肺炎にて入院. 気管切開後一時肺炎は改善したが, 嚥下困難及び筋固縮強く, その後も誤嚥を繰り返した. 長期臥床状態で, ECドパールなど Parkinson 病薬3種, 鎮咳薬・抗菌薬, 抗結核薬など5種の経口薬物投与と胃管栄養により管理されていたが, 突然ショックとなり, 緊急輸血を受けた. 翌日の内視鏡検査で, 胃内に大量の凝血塊を認めたが出血源の同定は不可能であった. ショックより5日後再度大量吐血し急死に終わった. 剖検で, 食道上部気管分岐部の高さに, 2個の縦走潰瘍を認め, その1つに大動脈食道瘻の開口が確認された. 潰瘍周囲の食道粘膜はほぼ正常で, 食道癌や食道内異物はなく, 大動脈の動脈硬化は軽度で, 瘻孔内面は食道上皮で被覆されているので, 薬物の停滞に起因する慢性食道潰瘍の進展が, 隣接する大動脈との間の瘻孔形成の病因と推定された. 本疾患は稀であるが, 長期臥床の高齢者への経口薬投与の際は, 薬物性食道潰瘍の発生を念頭において, 注意深い看護が必要であることを示す症例と考えられた.

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