抄録
血圧日内変動の正常値算出及び血圧日内変動パターンに及ぼす性, 加齢の影響について検討する目的で, 正常血圧ボランティア267例 (男性114例, 女性153例, 平均52.1±24.6歳) に対し, 携帯型自動血圧計を用いて30分毎に24時間血圧を測定した. 日内変動の解析は, 24時間の平均値を算出, また cosinor 法を用いて, MESOR, Amplitude, Acrophase の各指標を求め, 男女別に, 年齢により若年群 (Y群; 40歳未満), 中壮年群 (M群: 40~59歳), 老年群 (E群; 60歳以上) の3群に分け, 各群間について比較検討した.
男性では, 24時間収縮期血圧はE群で有意に高かった. 拡張期血圧はE群>M群>Y群であった. 一方, 女性では収縮期血圧, 拡張期血圧ともE群>M群>Y群>であった. 各年齢群での90%tile未満を正常血圧とすると, 男性ではY群126/75mmHg, M群126/76mmHg, E群154/85mmHg以上が高血圧と診断された. 女性ではY群117/67mmHg以上, M群125/77mmHg以上, E群151/79mmHg以上が高血圧の診断となった. 血圧日内変動パターンの加齢変化については, 男性では, 収縮期血症のMESORはE群で有意に高かった. Amplitude の大きさはY群>M群>E群であった. Acrophase は年齢の高い群ほど早い時間帯への移行が認められた. 拡張期血圧は収縮期血圧と同様の傾向が認められた. 女性では男性と異なり, 収縮期血圧, 拡張期血圧ともMESORは高齢になるに従って上昇したが, amplitude は各年齢群で有意差を認めなかった. しかし acrophase は男性と同様に, 年齢が高い群ほど早い時間帯への移行がみられた.
以上より, 24時間血圧値, 血圧日内変動は, 性, 加齢の影響を強く受け, 24時間血圧について検討する際には sex-age matched 群との比較が重要であると考えられた.