日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
Cisapride による parkinsonism
誘発例と悪化例の報告
内藤 寛葛原 茂樹
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1994 年 31 巻 11 号 p. 899-902

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抄録

Cisapride によって誘発されたパーキンソニズム, およびそれによって悪化したパーキンソン病の各1例を報告する. 症例1: 75歳女性. 便秘と食欲不振に対し cisapride を投与され, 約1年後にパーキンソニズムが出現, 前傾姿勢, 後方突進などの歩行障害, 歯車様の筋固縮, 振戦, 強い抑うつを認めた. 薬剤の中止後, 約2カ月でほぼ病前の状態に回復した. 症例2: 66歳女性, パーキンソン病の便秘症状の治療目的で cisapride を投与され, 2カ月後に無動と固縮が悪化して嚥下困難と呼吸困難が出現し, 気管切開, レスピレーター管理を必要とした. Cisapride 中止後, 約3カ月で歩行可能になった. 本薬剤は, コリン系のみに作用してドパミン系の阻害作用を欠き, 脳内への移行は少ないとされてきた. しかし, 実際にはパーキンソニズム誘発性があることに留意し, パーキンソン病患者や高齢者に投与する場合には, 副作用出現に十分注意する必要がある.

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