抄録
アルツハイマー型痴呆 (DAT) におけるMRIの診断的意義を明らかにする目的で, DAT31例 (平均年齢74.7歳) と老年者コントロール (C) 24例 (平均年齢74.1歳) のMRI所見を比較検討した.
各領域の面積測定からDAT群では有意な萎縮性変化を認めたが, C群とはある程度の重複がみられた. この中で側脳室下角の面積測定が両群の判別に最も有用であり, 痴呆の程度とも有意な相関が得られた. 側頭葉内側部の一次元的計測から, 側脳室下角横径-側頭葉内側径-鉤間距離による計測パターンを比較すると, DAT群の84%は側頭葉内側径が相対的に短縮する∨パターンを示したのに対しC群ではわずか8%にみられたにすぎなかった. また側脳室下角の有意な拡大を示さなかった軽度または中等度痴呆例の一部でもこの∨パターンが確認された. 下角面積測定と側頭葉内側部の一次元的計測パターンから感度71~94%, 特異性88~100%となり, これらはDATの診断に有用な評価法と考えられた.
深部白質病変のうち側脳室周囲高信号域 (PVH) はDAT群の高度痴呆例で多くみられ, 重症度との相関から病像の進行過程を反映していることが示唆された. しかし, 白質高信号域 (WMH) はDATとの直接的な関連は認められず動脈硬化性危険因子との関連が推測された.
以上から, DATの診断には側頭葉内側部の萎縮の評価が有用であり, 深部白質病変のうちPVHは病態との関連が推測された.