日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
市街地の在宅老年者における転倒の予測因子
朝田 隆木之下 徹
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1994 年 31 巻 6 号 p. 456-461

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抄録

市街地の個人住宅に居住する平均年齢73.8±7.3歳の103名を対象に1年間にわたって転倒発生を前向きに調査した. 調査開始時にインタビュー, 心身機能検査, 血算・生化学・心電図検査を行い, さらに服用薬剤を確認した. また特に平衡機能に注目して開眼直立姿勢で重心動揺の測定を行った. 以後2カ月ごとに手渡した記録帳をもとにした本人の陳述により転倒発生の有無を確認した.
この結果1年間に発生した転倒は54件, このうち3件が骨折に至り, 年間2回以上転倒した者は14名であった. ロジスティック回帰分析により年間2回以上転倒した者に寄与する要因を検討した. この結果, 調査開始時に測定した項目のうち「転倒の既往」,「単身生活でないこと」,「つぎ足歩行の拙劣」が転倒発生を予測する因子として指摘された. また重心動揺と転倒の関係については, 重心動揺の測定値は将来の転倒を直接には予測しないことが示唆されたが, 重心動揺の面積の測定値には転倒の既往が説明力をもっていることが明らかとなった.

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