日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
抗リン脂質抗体陽性の高齢者大動脈炎症候群の1例
横井 健治赤池 雅史重清 俊雄齋藤 史郎
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1994 年 31 巻 9 号 p. 716-719

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抄録

症例は84歳女性. 本例では約8年間のあいだに心筋梗塞, 多発性脳梗塞, 視力障害および四肢の潰瘍性病変がみられ, 同時に赤沈およびCRP高値といった炎症反応が持続して認められた. 入院時の検査成績でループスアンチコアグラントは希釈ラッセル蛇毒時間で150秒と陽性で, 抗カルジオリピン抗体はIgGサブクラスが21.2単位と陽性で, また梅毒反応は疑陽性であった. 抗核抗体は80倍と陽性であったが, 抗二本鎖DNA抗体は陰性であった. 胸部および腹部のMRアンギオグラフィーで, 両総頸動脈はび漫性に狭窄し, 両鎖骨下動脈はその起始部で完全に閉塞し, また腹部大動脈も腎動脈分岐部直下で完全に閉塞していた. またそれらの矢状断面では罹患血管壁の肥厚もみられた. したがって多彩な血管病変と炎症反応高値および大血管を中心とした閉塞性血管病変の存在より, 本例を大動脈炎症候群と診断した. これまで抗リン脂質抗体陽性の大動脈炎症候群は5例報告されているが, いずれもきわめて高度な閉塞性血管病変を伴っていた. 抗リン脂質抗体が血栓形成や血管炎を惹起することが知られており, 抗リン脂質抗体が本例の大血管の高度な閉塞性血管病変の促進に関与している可能性が考えられた.

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