日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者急性肺塞栓症の臨床像の検討
藤岡 博文大西 孝宏田中 淳子山田 典一中村 真潮平岡 直人田中 英樹小西 得司中野 赳
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1995 年 32 巻 10 号 p. 641-647

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抄録
高齢者の肺塞栓症の臨床像を明らかにするため, 自験急性肺塞栓症111例 (男53例, 女58例) を65歳以上のA群38例と65歳未満のB群73例に分けて, その臨床病像を比較検討した.
両群間で広汎型, 亜広汎型で比較した閉塞肺血管床の大きさに差がないにもかかわらず, A群の死亡率は58%とB群の23%と比して有意に高かった (p<0.01). さらに剖検のみで確定診断された症例を除いて, 肺シンチグラム, 肺動脈造影で臨床診断された症例のみで死亡率を比較すると, A群では27%, B群では3%とA群に著明に多い結果であった.
また臨床症状ではA群で呼吸困難が87%にみられB群の68%に比して多い傾向があった (p<0.05). これらの症状の発現が明瞭なものはA群で53%, B群で77%とA群では発症時点が不明瞭なものが多い (p<0.02).
検査所見では心電図での頻脈, 右脚ブロック, 時計方向回転, 動脈血ガス分析での酸素分圧低下がA群で多い傾向にあった.
肺塞栓症はそれ自体臨床像が非特異的な疾患であり, 特に高齢者では発症が不明瞭なことよりその診断は困難である. しかしながら高齢者ほど本症が多いことが病理学的検討で知られており, 本症に対するさらなる認識が必要である.
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